仔牛(新生仔)の免疫
 新生仔の免疫機能は、生後10〜15週で発達し始めます。そのため生まれたばかりの仔牛には、免疫機能がほとんどありません。しかし、出生とともに仔牛は外界の様々な物質にさらされるため、免疫機能がないと、すぐに感染症にかかってしまいます。
 では、仔牛はいかにして外界の様々な物質から体を守っているのでしょう??
移行免疫:親から仔へ抗体を与える
 ここで、移行免疫というコトバを紹介します。これは上記の通り、親から仔へ抗体を伝えることにより、免疫機能が発達するまでの一定期間、仔牛の免疫を母親の抗体に代行してもらう仕組みです。
移行方法は一般の家畜と同様に、牛の場合”初乳”により抗体を伝えます。

初乳

 分娩後の一定期間、お母さん牛から出される牛乳を初乳と言います。黄褐色で、タンパク質含有量が高く濃厚で、病原菌に対して抵抗性を有する免疫抗体(免疫グロブリン)が含まれています。また、ビタミンAの移行手段としても、初乳は重要な役割を担います(特にウシ、ブタ)。

〜もっと詳しく〜

1.免疫抗体もタンパク質なので、消化される

 タンパク質は消化管に入ると胃酸や膵臓の酵素によって分解され、小さな形で小腸上皮から吸収されます。そのため、通常では初乳を与えても抗体は分解されてしまい、仔牛の体の中には取り込まれません。
 ここで重要になってくるのが新生仔における消化の特徴です。これは生後約24〜36時間に限定した現象です。どのようなものかというと・・・

・胃酸分泌の活性化と遅延
・膵臓の酵素の分泌遅延
・小腸上皮で、非常に大きなタンパク質の吸収(飲作用)


という現象です。これにより免疫抗体が消化されずに新生仔の体内に移行されるのです。

2.免疫力が弱まる時期

 初乳によって体内に取り込まれた免疫抗体は、時間がたつにつれて仔牛の体から無くなっていきます。仔牛の免疫機能がまだ十分に発達していない間にも母親の免疫抗体は減っていってしまうため、結果的に抗体の全体量(母親の免疫抗体量+新生仔の抗体産生量)が少ない期間が出てきます。これが大体5〜12週齢(約30〜90日齢)までの間です。
 哺育舎やパドックで管理している牛たちがまさにこの時期の牛たちですね。衛生管理や飼料管理をきちんと行って、病気は防いであげましょう。

3.初乳による免疫移行

 免疫移行は哺乳類に存在する大切な免疫機構です。このうち初乳による免疫移行はウシの他にウマ、ヒツジ、ヤギなどの有蹄類、イヌ、ネコで極めて重要です。
 ちなみにヒトは、胎盤を通過して免疫抗体を受け取ります。

4.初乳を与えるタイミング

 生まれてから12時間後に初乳を与えた場合、生まれてすぐに給与したものと比べて免疫グロブリンの吸収量が半分程度になります。そして24時間を過ぎるとほとんど免疫グロブリンが吸収されません。これは仔牛出生後、腸管における免疫グロブリンの吸収能(ピノサイトーシス)力が出生後4時間までは機能するのですが、それを過ぎると吸収能力が著しく低下し、24時間を過ぎると吸収能力がほとんど消失するからです。また誕生から一定期間は消化酵素の分泌が制限されていますが、時間の経過に伴い、第4胃・腸管における消化酵素の分泌が高まり、タンパク質分解能力が上昇してしまいます。つまり仔牛がその免疫を吸収することができる時間は限られているので、生まれてからできるだけ早く初乳を給与することが重要です。

5.そのほかの初乳の役割

 初乳の給与では移行免疫・母子免疫が問題として取り上げましたが、免疫グロブリンの、初乳による腸管粘膜の局所免疫としての働きも認識する必要があります。簡単に言うと、初乳を飲むことで初乳に含まれる免疫抗体が腸の中のバイ菌をやっつけてくれて、結果的に仔牛が病気になるのを防いでくれるということです。また、免疫抗体の大部分は消化酵素によって分解されますが、分解されたタンパク質も腸の内壁にへばりつき粘膜における病原体の定着や侵入を阻止する働きがあるのです。そのために、免疫抗体が実際には体内に移行しなくなっていても、少なくとも3日間、可能であれば10日間くらいは給与することが疾病予防に有効であると考えられているのです。
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